教化センターリーフレットA「今月のことば」−20107月号(277

選択の大宝海に

帰して

念仏成仏すべし『教行信証』

 

2年前に退職した団塊世代のいとこから、「最近落ち込んでいる。何か元気の出る薬はないものか」と聞かれた。これまでは、たて関係でつながり、地位やら、所得の多少で判断される社会のなかで頑張ってきた。それが今、何もない状態にあり、これから何をより所に生きていけばいいのかというのである。

 《帰去来、魔郷に止まるべからず》

善導大師は、自分が存在することの大事さを見失わせる世界に止まってはならない、阿弥陀仏に帰依せよと教えられた。

 その阿弥陀仏は、仏の世界に生まれたら、すべての人にこれまで自分かやってきたことをことごとく知らせよう、もし知ることができなかったら仏になったとは言いませんと宿命智通の願に誓っておられます。また阿弥陀仏の世界の空には、七重の網がかかっていて、そのすべてのつなぎ目には鈴が飾られている。そして風が吹くとその鈴がきれいな音を出して響きあうといわれています。

 私たちは、強い者が勝つという意味をもつ娑婆の世界にあって、ひたすら上ばかり見て、目の前の仕事にいい結果を出すことしか考えない。またその娑婆では、周りの人に支えられてきたことや親に育てられたことなど振り返っている暇がなかなかないというのです。阿弥陀仏は、そんな自分のやってきたことに申し訳ないと頭が下がり、周りにいてくださる人たちに有難いことと気づかされるところに、人と人とのつながりが響きあい、本当の宝とは何かが明らかになってきますよといわれるのです。

 「人生は修行の旅」と教えてくださった先達がおられます。人生に引退もリタイヤも老後もない。あらゆる人を隔てず、導いてくださる阿弥陀さまに、自分のことに目がいかない私を教えられながら、与えられているつながりのなかで、共に生きる道がある。命が輝きあう道がある。

本当の宝を教えてくがさる阿弥陀仏に南無しながら、その修行を終えてお浄土に帰らせていただく道につくことが願われています。

 

 

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